真実

「落ち着いて・・・話を聞いて欲しい」 カームがアキラ達に向かって話し出した。
「カーム様、これはどう言う事なのか?」 オームがカームに詰め寄った。
 ロームは、アキラにしがみ付いていた。 震えが止まらない様だった。
「てめえ、俺達を騙したのか!?」 アキラの剣幕は収まらなかった。

「頼む、落ち着いて欲しい。 ご存知の様に、TONA人は争いを好まない。 アキラ、事情あっての事なのだ、信じて欲しい」
「カーム様、お話をお伺いしましょう。 しかし、この場は落ち着かない。 もう少し落ち着ける部屋はありませんか」
「オーム様、本当に申し訳なかった。 本意では無かったのだ、信じて欲しい。 私の執務室の応接へお越し頂きたい」

 カームを先頭に、エレベーターを使い階下へ降りた。
 先程の部屋よりやや小ぶりな個室が2~3ある。 その一つの扉を開け、カームが3人を招き入れた。

「オーム様、皆さん。 お座りください」

 TONA独特のデザインだが、落ち着いた調度の応接セットに4人が腰を下ろした。 ロームはまだ不安を隠せない様に、アキラの腕にしがみ付いていた。

「ローム、本当に申し訳なかった。 先程のアンドロイド達との会話は忘れて欲しい」
 カームは、ロームに対し深々と頭を下げた。
「カーム様、正直申し上げて驚いています。 これは全て貴方の指示なのですか?」
「オーム様、全て正直に申し上げよう。 その通りです。 しかし、私もどうすべきだったのか分からなかった」
「いつから・・・いつから、長老会がアンドロイドで運営されていたのですか?」
「ああ、全てを説明しよう。 アキラ、ロームも聞いて欲しい。 その上で、君達の判断を聞かせて欲しい」 そう言うと、カームが語りだした。

 私がまだTONA連邦政府で勤務していた時、長老会メンバーだった父に呼び出された。
 父は長老会の最若年だった。 いや、そう聞かされていたし、そう思い込んでいた。
 父から聞かされた話は、衝撃的だった。

 自分以外は全てアンドロイドであり、長老会の発言は全て自分の意志だったのだと告げられた。 父も祖父から、この任を引き継いだのだと。
 TONAの長老会メンバーは、代々私の一族の者から選任されていた。 だが、種としての繁殖力低下が原因で、後継を維持できなくなっていたのだ。 しかし、長老会の存続無くしてTONAの意思決定は有り得ない。

 何代か前、長老会メンバーが死去する度に、アンドロイドを代役にする事にした様だ。
 祖父の代には、祖父以外が全てアンドロイドだったと言う事だ。
「な、なんと言う事だ・・・」 オームが愕然としていた。
「私も苦しかったのだ・・・誰にも秘密を打ち明ける事が出来ない。 一方で、私の考えが間違っていたら、TONAの運命を大きく歪めてしまう。 毎日が針の筵の上に座っている様な感覚だった」 カームは涙を流しながら訴えた。

「公表してはダメなのか?」 アキラが口を挟んだ。
「アキラ、君には分かるまいが、ダメだ」 オームが、断じた。 ロームも頷いている。
「アキラ、TONAに於ける長老会の存在は絶対で有り、その指し示す方向がTONAの向く方向なのだ」 オームがアキラに諭す様に説明した。

「私は、祖先の様に優秀ではない。 それは自分が一番分かっている事だ。 しかし、文明創始の一族の末裔として、責任を全うする事だけを考えて来た」 カームは嗚咽しながら、心情を吐露していた。
「文明創始の一族?」 アキラが呟いた。
「そうだな、改めて説明しよう、TONA文明の歴史を」 カームは少し落ち着きを取り戻していた。

 TONA文明の創始者カーミ、この私の遠い祖先に当る人物だ。 アキラも聖地で見たと思うが、カーミの像が祀られていた筈だ。 あの人物だよ。
 カーミは、まだTONA人達が石器を用い、細々と家族単位の集団で生活を行っていた頃、あの聖地に足を踏み入れ、鍛錬の末に偉大な知恵を授かったと言われている。
 カーミの子供や孫たちは皆優秀で、大規模な農耕や金属の精錬、様々な器具を考案し、その他の民をまとめ上げ、徐々に大規模な集団、即ち国を形成していった。
 カーミとその子孫達は民の指導者として崇められ、皆もカーミの指示に従った。

 カーミの死後、その子孫達は特に優秀な者5名で構成される長老会を結成し、重要な判断を協議の上で決定するシステムを構築し、それは現在に至るまで継続してきた。
 カーミの死後何世代をも経て、国は大きくなり、ついには惑星全土を掌握するに至った。

 その過程で科学技術は発展を遂げ、惑星TONAは文明社会となっていた。 いよいよ科学技術が惑星からの脱出を可能とする頃には、司法・行政・立法の組織の上に、絶対的指導者として長老会が存在する様になっていた。 その時点でも、いや今でも、長老会の存在は絶対で有り、その意思に異を唱える者は居なかった。 それ程に、TONAでは絶対的なものなのだ。 アキラには分からないだろうが、長老会メンバーに会うだけでも、全てのTONA人は委縮する程だ。 オームやロームの対応を見ても、分かって貰えると思う。

 ここ数千年、TONAの民は徐々に減少していった。 原因は分かっていた。 TONAの女性の繁殖能力が失われ始めていたのだ。 皆も知っての通り、生命誕生から数億年、惑星TONAで生まれた様々な種は、劇的な環境変化による絶滅を除けば、概ね同様の理由で絶滅していた事が分かっていた。 原因は不明だが、恐らくはDNAに組み込まれてしまっていたのだろう。 この宇宙を駆け巡る科学技術力を以てしても、解決出来ない事だった。 或いは、神の領域だったのかも知れない。 もし、種として組み込まれた運命ならば逆らえないかも知れない・・・TONAの長老会はそう考え始めたのだ。 しかし、解決策を模索しようとする事も諦めなかった。

 5千年程前に、いよいよ星間航行が可能な技術が整い、惑星WAKOの知的生命とのコンタクトを成功させると、TONAの民は一斉に銀河系に散らばって行った。
 銀河系を探査するメンバーには密命が与えられていた。 原因不明の繁殖能力低下を回避する方法を探す事だった。 様々な惑星、様々な文明とのコンタクトを通じ、何とか新たな知識を得ようとしたのだ。
 一方で銀河連盟の拡大に伴い、TONA人の独善的な探査活動を行う事が困難になっていった。 その頃には、長老会メンバーにも諦めの声が出始めていた。
 結局、この数千年の間に、宇宙に散らばったTONAの民はTONAに戻り、人口は減少の一途を辿った。
 ローム、君が生まれた事は一縷の望みだった。 君の母上には申し訳ない言い方だが、例え半分でもTONA人ならば、TONA人の男性と繁殖する事で、TONAの血を濃くして行く事が出来る。 今欲しいのは、繁殖力を持った女性なのだ。
 しかし、私の考えが過ちで有った事に気が付いた。 許して欲しい。 例え一時でも、何と勝手な事を君に押し付けようと考えた事を。

「やはり、カーミは黒い物体に触れたんだ。 そして膨大な知識を得た」
「何かね、黒い物体とは?」
 ロームはカームに聖地で撮影した写真を見せた。
「これです。 今もカーミの像の右腕に握られています。 この物体は、3億年前にこの銀河系で栄えた文明の末裔が、一億年程前に製作し銀河系にばら撒いた“データバンク”です。 直接生体と接触する事で、脳に刺激を与え様々な知識を埋め込むと共に、その個人の脳細胞を増殖し活性化する機能を持っていました」
「これが・・・かね?」
「はい、稼働している状態では、電磁波を発生している為、青く光って見えますが、この画像の物体は既に役目を終え、停止した状態になっているものです。 惑星NEDA、惑星EDENでも同じ物が発見され、同様の機能を果たした証拠も得られています」
「なんと・・・では、我々も・・・」
「そうです。 恐らく最初にカーミ様が触れ、膨大な知識を得た。 優れた頭脳は子孫にも遺伝したでしょう。 恐らく、子孫の方々も時に物体に触れ、その時点での技術を超えた知識を得た。 恐らく、宇宙進出を果たした頃に機能を停止した筈です。 十分な文明レベルにある者が触れると、機能を停止する様に設計されているのです」
「そうだったのか。 オーム様、貴方もお気付きになったと思うが・・・TONAのデータベースにはアクセス権限が設定されている。 例え事務方トップと言えど、長老会メンバー以外にアクセス出来ないデーターが存在する」
「ええ、カーム様、知っています。 私でもアクセス出来なかった事に驚いた経験も持っています」
「そのデータベースで、私は“青く光る知識の石”を見た。 少し待って呉れ、今お見せしよう」 そう言うと、カームがコントロール装置を操作し始めた。

 応接のテーブル上に3D画像が表示された。

「これだ! 間違いない」 アキラが叫んだ。
「そうか・・・これは、凡そ6千年前に撮影されたものだ。 まだ、青い光に輝いている。 当時の撮影技術なので、画像は荒いが・・・」
「この物体から知識を得ていた事の証拠です。 その後に輝きが失われ、カームの像と共に祀られたって訳だ」
「カーム様・・・“タラオ”と言うワードを検索出来ませんか?」 オームが口を挟んだ。
「“タラオ”? スペルはTARAOですか? 貴方の奥様の関係ですか?」
「いいえ、以前に私が間違ってアクセスし、拒否された単語です」
「どれ・・・ああ、ヒットした。 表示しよう」

「これは! あのタラオだ!」 アキラが驚きの声を上げた。
「間違い有りません!」 ロームも同様に驚きの声を上げた。
「アキラ、ローム、知っているのか?」
「これは、俺達が銀河系の外洋の磁気嵐に巻き込まれた時に、俺達を救助して呉れた超文明の姿です。 恐らく、この画像は彼等が我々とのコンタクト用にメーキングした印象画像だと思われますが、12億年前から稼働しているシステムとの事でした」
「じゅ、12億年前から? 信じられん」
「この超文明は15億年以上前に発祥したと言っていました」
「15億年・・・TONAでは多細胞生物が居たか居なかったかと言った時代だ! 先程の物体は彼等が?」
「いいえ、違いますが・・・物体の製作者もこのタラオに救助された者でした。 このタラオからは、銀河連盟との連携に応じると言って貰っています。 先日、銀河連盟の連盟議会に報告したばかりです。 ご存じなかったですか? しかし、何故この画像がTONAのデータベースに有るんだ? 隣銀河探索は全て失敗していたのでは?」
「連盟議会に報告済みなのか? 私の耳には入っていなかった。 いや、或いは報告が有ったが、私の心がそれを聞き流していたのかも知れないな。 しかし、それ程の超文明ならば、TONAの問題を解決するヒントが貰えるかも知れない」
「そうですよ! きっとそうです。 でも、そう考えると・・・過去にタラオとのコンタクトに成功していたにも関わらず、何故、それを極秘のデータベースに埋もれさせてしまったのでしょうか?」

 カームがコントロール装置を操作し、更に詳細な情報を引き出した。

「これに依ると・・・3,800年前に、有人の隣銀河探索を行った記録が出て来た。 過去の隣銀河探索の失敗を踏まえ、かなり慎重な調査活動を行った様だな。 探査船は磁気嵐を前に立ち往生し、そこから前には進めなったがタラオと名乗る者からのコンタクトを受けた様だ」
「調査員の情報は有りますか?」
「ああ・・・全員がTONA人だった様だな。 だから、調査局の公式記録に保存されず、TONAの極秘データベースに隠された様だ」
「しかし、何故? 大発見だった筈だ!」
「アキラ! 今思い出しました。 タラオは3,800年程前に磁気嵐に近付いた船にコンタクトした事が有ったと。 それ切りだったと、タラオも言っていました。 あの時は、SONAの船に注目していましたので・・・すっかり忘れていました」

「こう書かれている。 TONA文明を遥かに凌駕する超文明であり、銀河連盟全体がTONAによるコントロールを失う懸念がある・・・と記録されている」
「当時の長老会は保身を考えたのか!」 オームは激高した。
「オーム様、詳細の確認が必要だが・・・お考えの通りでは無いかと推定する」
「何と言う事だ! 銀河連盟創始のTONA人ともあろう者が!」
「そんな時代だったのだ・・・オーム様。 恐らくだが、3,800年前は、TONA文明が銀河連盟をリードしていた。 それ故に、TONAの長老会の決断が、銀河連盟の運命をも左右する時代だった。 やはり保守的だったのだろう。 当時の長老会は、自らの判断で超文明との継続的コンタクトと言う大きな決断が出来なかったのだろう。 自らの立場を失うリスクを冒せなかったのだと思う。 今の自分を思えば・・・当時の長老会メンバーの考えも分かる気がする」 
 カームは項垂れながら呟いた。

「今は、TERAの連盟参加もあり、時代は大きく変わった。 最早、TONAの存在など過去の遺物なのだ。 希望に満ち溢れ、新たな知識を貪欲に欲する・・・TONAが初めて宇宙に飛び出した頃の様に・・・TERAの民が銀河連盟の中心を担っている。 時代が欲しているのだ。 TONAが我を張る時代ではない」
「そうです! お父様。 超文明とのコンタクトで、新たな知識が得られるかも知れません。 既に、銀河系外洋の磁気嵐に対するシールド技術を授かっています。 お願いです。 私は、これからもアキラと共に、銀河系の未来の為に働きたい。 そして、この身と魂は、アキラに捧げたい」 ロームは毅然と、カームとオームを見据えて主張した。
「ロームよ、無論の事、異議は無い」 カームはロームに深々と頭を下げた。

「ロームよ、この建物に入る際、君達の非接触検査をさせて貰った。 透過検査だよ。 物騒な物を持ち込まれては困るのでね。 それで分かったのだが・・・君には新しい命が宿っている」
「えっ!」 ロームもアキラも、無論オームも驚きを隠せなかった。
「恐らく自分でも気づいていなかっただろうね。 しかし、その事を確認した時、私の決意も決まった・・・全てを語ろうと。 君達に説明しようと部屋に入ると・・・既にアキラによってカラクリが暴かれたところだったのだ」

「カーム様、さぞかし苦悶した事であろう。 心中は察します」 オームが擁護した。
「オーム様、改めてご相談が有ります」

エピローグ

 アキラとロームは、10名の銀河連盟使節団と共に、銀河の外洋を目指していた。

「これより銀河系を出て、隣接銀河でのタラオとの接触を試みる」 アキラが力強い言葉で、銀河連盟 中央府との交信を行っていた。
「ご無事と成果を期待します」 相手側の中央府高官が返信した。

「いよいよですね」 ロームがアキラの後ろから声を掛けた。
「ああ!」 アキラが力強く答えた。

・・・・・・

 数日前、銀河連盟 中央府 調査局ステーションのいつもの会議室。 ワダ・アキラ・ロームの3人が集まっていた。
「しかし、いつもながらお前達には驚かされるよ。 あのTONA連邦政府を説き伏せたのだからな」
「運が良かっただけですよ。 それに・・・ロームのお父さん、オームのお力添えが有ったお陰です」
「ええ、それに思わぬ収穫も有りました。 TONAの文明も、SONAⅡのソロによってもたらされたもので有る事が判明しましたしね」
「おおっ、それなのだが、本当に驚きだ。 今回の新事実は、銀河連盟の各加盟文明の殆どが、与えられた文明だった可能性を示唆している。 まあ、今後の調査をこの視点に絞って進めたいと考えている」
「そうですね。 銀河連盟の加盟文明が、極めて平和主義で有る事も、因果関係が無いとは言えないよな。 そうやって考えると、TERAは独自に発展した文明なのかも知れないな・・・野蛮だし」
「アキラ、私はTERA人の野蛮なところが好きです。 野蛮だからこそ、常に未来を見た行動が出来るのだと思います」
「おいおい、褒められているのか貶されているのか、微妙なご意見だな」
「褒めています!」 そう言うと、アキラに突然キスをした。

「うおっほん!」 ワダが咳払いをすると、二人はキスを止めワダの方を向いた。

「出来れば・・・その様な行為は、プライベートな時間にやって貰いたいものだな」
「し、失礼しました」 二人は顔を赤くした。
「まあいい。 ところで、ロームはお目出ただそうだな。 TONA人としては80年以上振りの妊娠だそうだが、本当に良かった」
「ありがとうございます。 この子は、75%はTERA人のDNAと言う事になりますけどね」 ロームは頬を赤らめながら自分のお腹を摩った。
「今心配なのは、ロームが・・・母親のタラの二の舞の様にならないかと、それだけが心配ですよ」
「アキラ! 銀河連盟の最高の医療スタッフがバックアップしている。 大船に乗った様なものだ! ハハハハ」 ワダが歯をむき出して笑った。
 アキラとロームの二人は、顔を見合わせ、肩を窄めた。

 後日、ロームがアキラと共に自室でリラックスしていると、オームからの通信が入って来た。
「おお、ローム、元気か?」 オームが語り掛けた。
「お父様! ええ、元気です・・・順調ですよ」 ロームはお腹を摩りながら答えた。
「おお、本当に楽しみだ。 待ち遠しいよ」 通信装置に映るオームの後ろから、カームがちらちらと顔を覗かせていた。
「お父様、まだまだ先ですよ。 それに・・・カーム様! お元気ですか! アキラ、父とカーム様から通信が入っています!」 ロームがアキラを呼び寄せた。
「ああっ! どうも。 アキラです。 お父様もカーム様も、お元気そうですね!」 オームの後ろで、カームがちらちらと顔を出し、手を振っていた。
「おおっ! アキラ! 元気にやっているかね。 ロームの事を頼むぞ」
「ご心配なく。 愛する妻と子供です。 命に代えても守りますよ。 ところで、その後は如何ですか?」
「ああ、カーム様と協力して、影の長老会を続けているよ。 カーム様のこれ迄の心労が良く分かった。 やはり、TONAには長老会が必要だ。 TONAの民の道標で有り、心の支えなのだからな」
「順調な様で安心しました。 この事は、この4人だけの秘密です。 絶対に漏らしませんよ!」
「ああ、頼むぞ。 おおっ、それと例のアンドロイドは改良しておいたよ。 またアキラの様な注意深い者と接見しないとも限らないのでね。 今度は、瞬きもするし、汗も掻く様にしておいた」
「そうですか、それじゃ何れの機会に、もう一度接見させて下さい。 私が確かめて差し上げましょう」
「ハハハッ、きっと君も驚くよ」 アキラはオームの笑い顔を初めて見た。 生粋のTONA人でも笑えるのだと初めて知った。 ロームも驚いている様だった。

「ところで、アキラ、ローム、隣接銀河の使節団に選ばれたそうだな」
「ええ、正に水先案内人と言うやつです。 もう一度タラオに会うのが楽しみですよ」
「アキラ、ローム、重大な任務だが宜しく頼む。 それと、TONAの絶滅を防ぐ手段も、是非調査して呉れ」
「分かっています。 私に出来るのは」 アキラはそう言うとロームのお腹を摩りながら。
「せいぜい数人を増やす事ですが、この世界には絶対に解決策が有ると思います。 任せて下さい」

・・・・・・

 探査船の前方には、果ての見えない磁気嵐が渦巻いていた。
 使節団のメンバーも、窓越しやモニターを見詰め不安を隠せないでいた。

 ロームは、コントロール装置を操作すると、船内へのアナウンスを始めた。

「乗客の皆さま、当機は間もなく磁気嵐に突入致します。 お座席にお座りの上、安全の為シートベルトをお掛け下さい。 尚、シートベルト着用のサインが消える迄、お席をお立ちにならない様お願いします。 また、磁気嵐通過の際は、目を傷める可能性が有りますので、遮光グラスをお掛け下さい」 そう言うとアキラにウインクを返した。
「当機の機長のアキラです。 当機は間もなく磁気嵐に突入しますが、磁気嵐の向こうは晴れ、隣接銀河は穏やかな陽気との情報です。 それでは、皆さまの未来が、より輝かしいもので有る事をお祈り致します」 アキラは機内アナウンスを終え、ロームに向かって右手の親指を立てると、大きな声で命令した。

「ジェミニ! 磁気シールド全開! 巡航速度で前進」
「アイアイサー」

 探査船は、未来に向かって発進した。

終わり

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