新たな事実

「それでは、長老会にアポを入れよう」
「ありがとうございます」
「但し、直ぐに会えると言う物ではない。 長老会は、その名の通り長寿のTONAの中でも特に長寿の方々の集まりだ。 最長老は260歳程と聞いている。 その他のメンバーも容易に集合出来る状況では無い筈だ。 時間は有るかね?」
「大丈夫です。 その為に伺ったのです」

「良かろう。 ローム!」
「はい、お父様」
「長老会の承諾が得られたらお前に連絡を入れよう。 それまで、聖地にでもアキラを案内するが良いだろう。 アキラにも、TONAについて知って貰いたい」
「分かりました。 アキラ、お父様からの連絡を頂く迄、聖地に参りましょう」
「聖地って?」
「惑星TONAの文明発祥の地と言われている場所です。 その昔は、容易に人が訪れる事も出来ない様な秘境でしたが、今は子供でも訪れる事が出来ます。 詰まり、観光地化されています」
「それは・・・願っても無い話だが。 オーム、無理なお願いをしておきながら、勝手をして良いでしょうか?」
「ああ、構わない。 私から提案したのだ。 ロームも久し振りだろう。 ゆっくりと行ってくるがいい」

 オームの家の駐機場から飛び立ち、聖地を目指す事になった。

「聖地・・・か」
「ええ、私も子供の頃に父に連れられて行った事が有りますが、もう20年以上も前の事です。 正直言って記憶も曖昧ですが・・・TONAの文明がそこから発展したと聞いています。 TONAの民は、可能なら一生に一度は行きたい場所の一つです。 その昔は、人を寄せ付けない程の秘境でしたので、誰もが巡礼に伺う事は出来なかったそうですが、1万年程前に開発が行われ、誰もがトレッキング感覚で行ける場所になりました。 5,000年程前に駐機場も整備され、今では身体障害者でも行ける場所になっています」
「ほう。 しかし、何でそんな秘境が文明発祥の地だったんだ?」
「尤もな質問ですが、私には分かりません。 唯、言い伝えでは、その地で鍛錬した者が、知恵を携え民を指導したと聞いています。 まあ、言い伝えですから・・・TERAの神話と同じ類と理解したら良いのでは」
「ああ、そうだな。 しかし、俺の様なよそ者が聖地に入って良い物なのか?」
「アキラ・・・父は、私が既に貴方に魂を捧げた事を理解して呉れました。 TONAでは、一生の契りを結んだ者は、よそ者ではありません。 詰まり・・・父はアキラの事を認めたのです」
「それは本当に光栄だし、有難いが・・・しかし、聖地の管理者には、そんな事分からないだろ?」
「いいえ、分かります。 私が同行している事が証明になります。 父が直ぐに理解して呉れた様に。 安心して下さい」
「そ、そう言うものなのか・・・取り敢えず、安心したよ」

「あ、アキラ。 前方に聖地が見えてきました」
「ほお、確かに山深いな。 折角だから、少し周回して貰えないか。 観察してみたい」
「分かりました」 ロームがコントロール装置を操作する。 「調査員の血が騒ぎますか?」
「いや、癖だよ。 癖ってやつさ」

 聖地は標高2,000m級の山々に囲まれていた。 最寄りの都市から数百キロも離れている。
 最初に聖地に来た人は、どうやってここ迄来たのか? 不思議なほどに秘境だった。
 良く見ると、聖地と思しき建物の周辺の山が削られている様に見える。 或いは風化によるものなのか。

 建物から少し離れた場所に駐機ポートと管制塔の様な施設が見える。 周りとのアンバランスが異様に思えた。

「ローム、ありがとう。 降りようか」
「目視観察は終わりましたか?」 ロームはキュートなウインクをアキラに返した。

 管制からの指示に従い、駐機ポートに飛行機を降ろした。

「おいおい、ローム。 飛行機を置きっぱなしで良いのかい?」
「アキラ、この聖地に来るのはTONA人だけです。 私が子供の頃に訪問して以降、ここを訪れたTONA人は2組だけだそうです。 詰まり、そのままで大丈夫です」
「はあ、了解。 ほとんど利用されてないんだな」
「新たなTONA人が生まれていない。 それが理由です」

 駐機ポートから管制塔を通って、聖地の建物に向かう。 何度かセキュリティ用と思われるゲートを通ったが、まったく人とすれ違う事が無い。

 建物はTERAの古い寺院の様に見えた。
「ローム、あの建物はいつ頃の建築なんだ?」
「5,000年程前に駐機ポートが建設された時に建て替えられたと聞きましたが、極力原形を留めたとも聞いています。 恐らく、2万年以上前の部分もあるでしょう」
「2万年! TERAとはスケールが違うな。 ピラミッドの比じゃないな」
「ピラミッド? ですか」
「ああ、昔の王の墓と言われている石造りの建築物なんだが、それでも数千年だ。 結構大きくて、衛星軌道からでも見えると言われた建築物さ」
「私は、半分TERA人ですが、TERAの事はほとんど知りません。 アキラ、この次はTERAを案内して下さいね」
「ああ、いいとも。 喜んでご案内申し上げるよ」
 そう言うと、ロームの手を引き寄せ、ロームの頭に手を回し、キスをした。
「あ・・・」 ロームは声も出せず、アキラにしがみ付いた。

 聖地に到着した。
「大きな建物だな」
「信仰の対象ですからね。 人々の想いが、この大きさになったのでしょう」

 扉を入ると、正面に実物大のTONA人の像が立っていた。
 右手を握りしめ、左手を高々と上げ遠くを指し示している。

「まるで、少年よ大志を抱け・・・だな」
「何ですか? それは」
「いや、TERAの日本州のある場所に、似た様な像が有るんだ。 いや、本当にそっくりだ。 髭迄似てるよ」
「現代のTONA人で髭を生やしている人はほとんど居ませんが、この当時は男性が髭を伸ばすのは普通だった様ですね。 まあ、ファッションですから、時代と共に変わりますよね」
「そうだな」 アキラは像に近付き、しげしげと見て回った。
 握られた右手には、何かを掴んでいる様だが・・・ふと、像の後ろに下に降りる階段を発見した。

「ローム、下に降りられる様だな」
「本当ですね。 前に来た時には気付きませんでした。 この先の部屋にTONAの歴史が綴られた博物館が有って、子供の時は、父に直ぐそちらに連れられたので」
「そうか。 それじゃ、博物館は後に行くとして、先に下に降りてみようぜ」
「調査局員の血が騒ぎますか?」
「そんなんじゃ無いよ。 俺にはTONA語は読めないから、博物館は退屈かも知れないって思っただけさ」
「それなら心配には及びません。 私が通訳しますから」
「へへっ、ありがとう。 でも、先に下に降りてみよう」

 下への階段は、若干照明が暗くなっていた。

「何だか暗いな」
「ええ、ほとんど人は降りないのでは無いでしょうか?」
「その様だが・・・ローム、そこのコントロール装置で照明を上げられないか」
「やってみます」 ロームが操作すると、明るく通路が照らされた。
「流石だな。 やっぱり役に立つよ」
「痛み入ります」

 階段を降り切ると、長い廊下に繋がっていた。

「この廊下も少し傾斜している。 かなり潜ってるな」
「いやな思い出ですが、NEDAを思い出しますね。 何だか熱が出そうです」
「トラウマってやつだな。 俺が居るから大丈夫さ」

 ロームは、アキラの腕にしがみ付く様に歩みを進めた。
 正面に扉が現れた。

「本当に、NEDAみたいだな」 アキラが扉を押すと、簡単に扉が開いた。
「これは・・・驚いた! マジかよ! 本当にNEDAの様だ。 あれを見ろ! 台座の様になっている」
「しかも、この台座は・・・溶けた岩石が再凝固した様な・・・表面がガラス化しています」
「この台座の上に何かが有ったんだろう。 この跡は! 信じられないが・・・例の黒い物体?」
「まさか! 私は聞いた事がありません。 まさか!」
「待てよ・・・あの像! ローム、戻るぞ!」

 アキラは猛然と来た道を走り出した。 ロームも後を追う。
 階段を息を切らして駆け上がり、像に辿り着いた。

 アキラは、像の握られた右手を注意深く眺め。
「ローム、見てみろ」
「これは!」
「間違い無いよ。 例の小さな黒い物体だ!」

 アキラが慎重に右手に握られた黒い物体を取り出した。

「ほら、やっぱり。 間違いない。 ローム、写真を撮って呉れ」
「ええ・・・スキャナを持って来れば良かったですね」
「ああ、しかし・・・間違いない。 このTONAにもこれが落ちていたんだ。 TONAの文明はこれによってもたらされたものだったんだ」
「信じられません。 私達の文明が、SONAのソリ・・・いやソロに誘われた物だったなんて」
「ああ、本当に驚きだが、ソロは時間軸では間に合わなかったが、目的を達成していたんだ。 ソロの装置でTONAの文明が栄え、結果として銀河系間のコンタクトにまで至った」
「もしかすると、他の銀河連盟加盟文明にも、ソロの装置に依るものが有るのかも知れませんね」
「ああ、惑星EDENのオリジナル文明は確実に違うと言えるが・・・ロームの仮説が正しいかも知れないな。 ここがTONA文明の発祥の地なのは、この物体にその昔のTONA人が触れたんだ! そして膨大な知識を得、広く民を導いた。 その後も、何度かこの物体との接触が行われたんだろう。 少なくとも1万年前に聖地が整備された時点では、この物体の青い輝きは失われていなかった筈だ。 恐らく、宇宙進出を成し遂げた5~6千年前に機能停止したのだろう。 そして、像と共に物体は祀られた・・・」
「銀河系内で同時多発的に文明が育まれたのは、間違い無くソロの装置が原因ですね。 もしそうでなければ、SONAやEDENの様に孤独のままに文明の終焉を終えていたかも知れません」
「考えたくは無いが、そうだったかも知れないな。 そうやって考えれば、俺達は・・・TONAもTERAも、そして銀河連盟の各文明も、ソロの希望の結果なのかも知れない。 俺達は、その希望に応える為にも、ベストを尽くして命を、そして文明を繋いで行かなくちゃいけないんだ!」

 ロームの携帯通信装置が鳴った。 オームからの通信だった。
「ああ、ローム。 以外に早く長老会のアポが取れた。 面会は明日だが、今日はもう戻っておいで」
「分かりました。 直ぐに戻ります」
「アキラ、長老会には明日会えるそうです」
「それは良かった! で、どうする」
「一旦、実家に戻り、明日に備えましょう」
「OK!」

ロームの実家にて

「只今戻りました」
「お帰り、ローム。 アキラ、聖地は如何だったかね」
「ええ、博物館は見る時間が無かったのですが・・・思わぬ発見が有りました」
「そうか、是非、話を聞かせて欲しい。 ああ、食事の用意を済ませておいたよ。 アキラは、食事前に入浴を?」
「ああ、いえ、食事後で結構です」
「そうか、それではテーブルへ。 TONAの銘酒も用意した。 口に合えば良いが」
「アキラ、TERAのワインと似た醸造酒です。 アキラのお好みの味だと思いますよ」
「それは、楽しみだな」

 大広間の一角に設置されたテーブルに3人が付き、食事が始まった。 肉類は一切無いが、色取り取りの野菜やスープが用意され、豪華な食事だった。

「アキラ、君のお好みの肉類が無くて申し訳ないが、是非召し上がって呉れ」
「ありがとうございます。 これを全部貴方が?」
「ああ、リタイアした身だ、他にする事も無いのでね。 味付けはタラ譲りだよ。 TERA人のアキラにも口に合うと思う」
「恐縮です。 そうですよね、貴方はTERA人に詳しい筈だ」
「ああ、TONA人では・・・恐らく最もな」 オームが自嘲気味に笑みを零した。

「おお、ところで思わぬ発見とは?」
「ええ」 アキラとロームは、聖地での発見の一部始終を説明した。

「何と! 黒い物体! それでは、我々の文明は与えられたものだったのか?」
「そう言う事になります。 ただ、ソロは切っ掛けを与えたに過ぎない。 文明自体は、TONAの人々が自らの力で培ったものです」
「今回の一連の調査で、タラオと名乗る超文明の存在も知りました。 私達は、TONAの、いえ銀河系の殻の中に留まっているべきではありません。 より高次元の存在へと進化しなければならないと思います。 私は、その為にも、アキラと共に調査局の仕事を続けたい」

 ロームの気迫にオームも強く心を動かされていた。

「ローム、アキラ、良く分かった。 明日は、私も長老会の説得に力を貸そう。 それが、タラへの、せめてもの償いだと思う」
「お父さん!」
「ローム、ありがとうございます」
「ああ・・・ところで、先程の超文明の件だが・・・私が連邦政府の仕事をし、事務方のトップになった時にもアクセス出来ないデータベースが存在する事を知った。 もしかすると、長老会には我々の知らない秘密が有るのかも知れない」
「どう言う事でしょうか?」
「うむ・・・まったくの偶然なのだが・・・私の妻がタラなのは知っての通りだが、ある時執務でちょっとした検索を試みようとして不意に妻の名前を入力してしまった。 いや、実は手が滑って一文字多く入力しただけだったのだが、君の話を聞く迄すっかり忘れていたんだが・・・」
「何が起きたんです?」
「私はTARAと打鍵した、間違って続けてOと入れてしまった。 そうするとアクセス拒否のアラームが鳴った。 その時は、私でもアクセス出来ないデータベースが存在する事に驚いただけだったが・・・タラオと言うワードが拒否の対象だったのだ」
「タラオ・・・超文明の!」
「ああ、もしかすると私の記憶違いかも知れない。 しかし、可能性は極めて高い」
「明日の長老会との面会は、一波乱有るかも知れませんね」
「ああ、“タラオ”がキーワードになるかも知れないな」

長老会

 アキラ、ロームそしてオームの三人は、長老会の建物を目指していた。

「長老会は・・・」 オームが説明を加えて呉れた。 「TONAの司法・行政・立法から独立した組織だ」
「非公式って事ですか?」
「まあ、そんな処だな。 しかし、影響力は絶大だ。 有史以前から存在すると言われているが、定かでは無い。 連邦政府と言えども、長老会の意向には逆らえない」
「何故そこまでの絶大な権限が? そもそも、そのメンバーはどの様に選定されているのですか?」
「正直に言って分からない。 メンバーは5人と聞いているが、実態は不明だ。 TONAの実権を握っている時点で、創設初期の銀河連盟の実権を握っていたとも言える」
「何だか怖いですね。 私は詳しく知りませんでしたが・・・まるで秘密結社みたいですね」
「ローム、何も怖がる事はない。 TONAの民に危害を加えたなどと言う過去は無いし、逆にこれまでTONAを導いて来た存在だ」
「そ、そうですよね」 と言いつつ、ロームはアキラの腕にしがみ付いた。 アキラもロームに手を回し、優しく抱きしめた。
「兎に角、ベストを尽くそう」

 目的の建物に近付いた。

「アキラ、あの建物だ」
 巨大な建造物だった。 あの聖地の如き建物に、中央にタワーがそそり立っている様な造形だった。
 飛行機を建物の中段程の駐機ポートに着陸させ3人が降りると、目の前に案内と思われる壮年のTONA人が待っていた。

「お待ちしておりました、オーム様」
「お久しぶりです、カーム様」
「さあ、こちらへどうぞ」 カームと呼ばれた者の後を3人が歩みを進めた。

「若いな」 アキラが小声でロームに囁いた。
「カーム様は父より1歳年上です。 見た目はお若いですが・・・長老会の窓口をされています。 カーム様の御父上も長老会のメンバーだと聞いています」
「ふ~ん。 長老会ってのは世襲制なのか?」
「その様に聞いた事は無いですが・・・そうなのかも知れませんね」

 3人とカームはエレベーターに乗り、タワーの最上部まで上がって来た。
 エレベーターの扉が開くと小さなエレベーターホールに出た。 正面に重々しい扉が有った。

「オーム様、さあお入り下さい。 私はこちらで待機しています」

 カームに促され、3人が扉の中に入った。
 意外に広い会議室の様だった。 正面に大きなテーブルが設置され、その向こう側に5人の長老達が座っていた。 部屋は扉側以外が全面ガラス張りで、TONAの大地を一望出来る様になっていた。

「オームよ、良く来た」 中央に座っている最長老と思われる人物が声を掛けてきた。
 5人ともかなりの高齢に見える。

「恐れ入ります。 お時間を頂き光栄です」 オームは深々と頭を下げた。 アキラとロームもオームに倣って頭を下げた。
「おお、お前がロームか・・・本当に若い」 最長老の右隣の長老が発言した。
「はい、私がロームです。 こちらは、TERA人のアキラです」
「ローム、既に性分化したのだな。 そのアキラに魂を捧げたのか」 最長老の左隣の長老が質問を投げ掛けた。
「はい、その通りです。 私は、このアキラにこの身と魂の全てを捧げました。 皆様の意に反している事は承知しておりましたが、TONA人として心変わりは有り得ません」

 一同を沈黙が包み込んだ。

「皆さま、本日お伺いしましたのは、このロームの意をご理解頂きたいとの主旨で参りました。 私としてもTONAの民が途切れる事を避けたい。 しかし、このロームは、このTERA人のアキラと契りを結びました。 ロームに自由を与えて頂きたい」
 オームは長老会メンバーを前に毅然と主張を行った。

 更に長い沈黙の後、最長老が口を開いた。
「ロームよ、事はTONAの未来が掛かっている。 それでもお前はTERA人を選ぶのか?」
「はい、私にとってTONAは故郷です。 TONA人の絶滅は防ぎたい。 これ迄皆さんが“倫理観”と言う呪縛の元に頑なに拒否してきた科学の力を借りてでも・・・しかし、アキラに捧げた魂は永遠です。 変わる事はありません」
「TONAを裏切ると言うのか?」
「裏切ると言う事ではありません。 別の方法も有ると申し上げているのです」
「許せぬ! 望まぬ事だが、改めてサラムして貰わねばならない」
「何ですと!」 オームが激高した。
「何なんだ! サラムって?」 アキラには何が何だか分からない。 ロームは顔面蒼白で固まっている。
「サラムと言うのは、まあ再教育と言う事だ。 実質的に洗脳の事だ! 過去、稀に出現した犯罪者に対して行われた・・・」 オームが押し殺したように、アキラに説明した。

「何だって! ちょっと待てよ! あんた方に何の権利が有るって言うんだ!」
「黙れ! TERA人よ、これはTONAの問題だ。 異邦人には、そもそもこの場に居る権利は無い。 立ち去るが良い」
「ちょっと待て! 本当にこれが銀河連盟創始種族のTONAなのか? それに、あんた方はその指導者じゃ無いのか!?」

 激高したアキラは、突然テーブルに歩み寄ると、テーブルを乗り越え最長老に掴み掛かった。

「アキラ! やめろ!」 オームがアキラを制止しようと声を上げた。
「アキラ!」 ロームも悲鳴を上げた。

 アキラは、最長老の手を掴むと何かを確信した様だった。
「思った通りだ。 こいつは、アンドロイドだ!」
「えっ」 オームは驚きの声を上げた。 ロームも状況が理解出来ないかの様に硬直している。
 アキラは、続けざまに他の4人の長老も確認した。
「5人ともアンドロイドだ! とんだ茶番だな! オーム、貴方も知らなかったのか?」
「ああ・・・何と言う事だ!」
「この部屋に入った時から可笑しいと思っていたんだ。 “違和感”ってやつだ! 注意して見ていたが、この5人は俺達と会ってから、一度も瞬きしなかった。 俺は、ロームと長い時間を一緒に過ごしたし、オームとも昨夜ゆっくり面と向かって話をした。 TONA人だって、TERA人と同様に頻繁に瞬きしている」

 アキラは、長老たちを睨み付けながら、オームとロームへの説明を加えた。
「入国管理ステーションのアンドロイド達も瞬きをしていなかった。 ロームに教えて貰うまでは、アンドロイドだとは気付かなかったが・・・言ってみれば“強烈な違和感”ってやつさ。 ボスに教えて貰った、調査局員の必須能力だよ」
「これは・・・どう言う事なのだ!」 オームは激しく狼狽えていた。

 その時、扉が開きカームが入って来た。
「待ってくれ! 事情を説明させて欲しい!」 カームが3人に叫んだ。

長老達はアンドロイドだった。 カームは何を語るのか!?
                          第9話 後編へ続く

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