アキラの実家

 二人は、オーストラリア州から日本州に向け、旅客機で移動していた。
 その昔は、ジェットエンジンの飛行機で10時間程も掛かったらしいが、今では1時間程度だ。

「ローム、まずは俺の実家に行こう。 両親も戻っているし、母さんにお願いして、婆ちゃんも呼んで貰った」
「アキラのご両親にお会いするのは、久しぶりですね。 お婆様にお会いするのも楽しみです。 しかし、少し鼓動が早まるのが気になります。 それに、体温も上昇しているような」
「ローム、いつも通りで良いよ。 余り気にするなよ」
 ロームは、アキラの言葉に僅かに笑みを浮かべた。

 日本州の空港から、ビークルに乗り換え、いよいよアキラの実家に向かっていた。
「綺麗だろ。 正面の右手に見えるのが富士山だ、日本州で一番大きな山なんだ」
「とても綺麗な景色です。 TONAは緑が多いですが、人口が少ない事も有って、これ程の建物はありません」
 ビークルが走る高速道路の両側は、巨大なビルが整然と並ぶ大都会だった。
「やはり、TERAは若い文明なのですね。 まだまだ、活気に満ち溢れている」
「ああ、そうかも知れないな。 TERA人は、今でも続々と宇宙に飛び出して行っている。 TONAの数千年前と同じなのかも知れないな」

 富士山の裾野、大きな一軒家の前でビークルが停止した。
「着いたよ。 降りよう、ローム」
 ビークルを降りると、家の玄関ではアキラの両親が出迎えて呉れた。

「ローム! いらっしゃい! こんな遠くまで、良く来て下さって」 ユリカが最高の笑顔で迎えて呉れた。
「ローム! アキラ! お帰り。 さ、入って呉れ。 予定が12時間も遅れるって言うから心配していたんだ」 ノブオも上機嫌だった。
「いや、何ね。 探査船の重力波ドライブのトラブルで、修理に12時間掛かっちまったのさ。 まあ、この通り・・・無事のご帰還さ」
 アキラの実家に招き入れられ、リビングに通された。
 趣味の良い、アンティークの家具が並べられ、とても現代の家庭には見えない。
「これは、親父の趣味でね。 2~300年程前の一般家庭をイメージした調度になっているんだ」
「素敵ですね」
 窓の外には、富士山が一望出来る。
「景色も良く、落ち着けますね」
「ありがとう。 ありがとう。 そう言って呉れると嬉しいよ」 ノブオは有頂天だった。
「ささ、早速だが食事にしよう。 ああ、それと、お婆さんは明日の朝にここまで来てくれる予定だよ」 アキラからノブオには、事情を説明済みだった様だ。
「色々とお気遣いありがとうございます」
「良いのよ、ローム。 いつもアキラを助けて下さって、ありがとうね。 兎に角、自分の家だと思って寛いでね」 ユリカも事情を知って、何かと気にしている様だった。

 4人で食事を摂りながら、話が弾んでいた。
「今回は、規定違反じゃ無いから、どんどん飲んで呉れよ」 ノブオはとても嬉しそうだった。
「貴方、無理強いはなさらないで下さいね」
「分かっているよ。 さあ、アキラ、グッとやって呉れ。 ロームもどうだい」
「親父、貰うよ」
「私も頂きます。 TERAのお酒は美味しいですね」
 ロームはグラスのお酒を一気に飲み干した。
「いける口だね~。 ところで、アキラ。 今度の調査は、どんなミッションなんだ?」
「親父、シークレット・ミッションなんだ、詳細は勘弁して呉れ」
「水臭いな、アキラ。 シークレットと聞いたら、更に興味が湧いて来た。 私も母さんも、調査局を離れたからな。 今は暇なんだ、是非、一丁噛みさせて呉れ」
「それは、無理だよ。 ボスに殺されちゃうよ」
「ワダか・・・分かった。 ワダには私から志願の連絡を入れておく。 気にせず、ミッションについて教えて呉れ」
「親父には敵わね~な。 まあ、実は今回のミッションの目的地について、恐らくTERA人で一番詳しい親父に話が聞きたかったんだ」

 アキラは、ノブオとユリカに、ワダから指示されたミッションの詳細を説明した。

「例の物体が!? こんな近くにも有ったのか!」
「親父! 同じ物かどうか分からないよ。 そもそも、大きさがまったく違う。 既に知っていると思うけど、惑星EDENで小型版を手に入れた。 俺の予想だと、それと同じ様な物が惑星NEDAの神殿に存在しているんじゃないかと思うんだ」
「そうか。 あの惑星なら、私も駆け出しの頃に調査した事がある。 確かに、私が一番詳しいと思う。 少しは、役に立つと思うぞ」
「それは・・・百人力だね」
「それも、TERAの諺ですか? ノブオは一人ですが」
「ああ、諺さ。 百人の仲間が出来た様なもんだって言う意味だ」
「それは、客観的に言って、事実ではないですか? 少なくとも、アキラよりも熟練の調査員なのですから」 真面目な顔でロームが答えた。
「そ、そりゃそうだが」 アキラは肩を窄めた。
 ユリカは、ニコニコと3人の掛け合いを楽しんでいた。

「しかし、厄介だな。 よりによってNEDAとはな~。 既に学習済みだとは思うが、NEDAでは2種族が争う状態が数百年続いている。 この神殿の事も覚えているよ。 年に一度、神殿の管理権を巡る争いが行われるんだ」
「戦争・・・なのか?」
「いや、戦争と言った様な血生臭い話じゃない。 私も、例の物体がここに安置されているとは知らなかったが、彼等2種族にとって、この神殿が神聖なものである事は疑い様もない。 恐らく、彼等が現在の知的レベルに達する以前から、聖地を巡る争いが行われていたものと推定している」
「ノブオは、彼等と接触したのですか? 連盟憲章違反では?」
「ローム・・・不穏当な事は言わないで呉れよ。 長期間の観察と、非接触での情報収集、歴史的な遺構の調査・・・結構、地道に、合法的に調査したんだよ」
「それならば良いのですが。 ところで、聖地を巡る争いとは、どの様に行われるのですか?」

「ああ、そうだったな。 知っているとは思うが、彼等は非常に大人しい、平和的な種族だ。 従い、争いはゲーム・・・いや、スポーツと言った方が適切か・・・によって行われていた。 各種族から代表数名が参加し、ルールは分からないが、神殿の広場で行われるゲームで勝った種族が、その後の1年間の神殿管理権を得る。 神殿には、管理する側の種族の印が毎年刻まれる。 だから、数百年続いていると確認出来たんだ。 それに、その記録によれば、10年や20年と言った長期間一方の種族が勝ち続けたと言う記録も見られた」

「しかし・・・それにしても、どうやって現地種族と接触せずに、神殿地下迄入るかだよな」
「アキラ、それを知りたくて、私に話しを聞きに来たんじゃ無いのか?」
「そりゃそうだけど、流石に無理でしょ」
「アキラ・・・ところが、そうでもないんだ。 さっきも言ったように、年に1度、神殿の広場で行われるゲーム、これは種族全員が見るんだ」

「全員! マジかよ。 一体、2種族で何人位なんだ?」
「概算で、それぞれ2万人程度。 従って、合計で4万人程度さ。 ほら、昔、TERAで人気の有った野球、その野球場だって4~5万人入れたんだからな。 決して意外ではない」
「成る程、すり鉢状の構造を、そのままスタジアムとして利用したって訳だ」
「確かに、神殿とスタジアムは明らかに建設年代が異なっていた。 神殿は、彼等がこつこつと自分達で建設したのだろう。 しかし、スタジアムは、恐らく彼等の有史以前から存在していた筈だ」

「ところで、どうやって侵入可能なんだ?」
「さっきも言ったように、ゲームの間は全員がスタジアムに集結する。 従って、地下への入り口になる神殿側はもぬけの殻になるって訳だ」
「成る程・・・ではあるが、ちょっとリスキーだな」
「しかしアキラ、恐らくその隙を突く以外には方法は無いでしょう。 別の地下通路を掘削する手も無いではないですが、時間も掛かりますし、掘削時の音が気付かれてしまう可能性もあります。 ノブオの提案の方が勝算はありそうです」
「おお、ローム。 中々、度胸が有るな。 感心したよ」
「親父、ロームを焚きつけないでくれよ」

「ところで、話は変わるが、この惑星NEDAには不思議な点がある。 惑星の全体像を見て呉れ。 ここが、神殿の有る島だ」
 食卓テーブル上に3Dで表示された惑星NEDA。 ノブオは、海洋に囲まれた島を指し示した。
「ええっ、こんなに小さいのか? それに、逆半球側に大陸があるのか」
「そうだ。 不思議なのは、この巨大大陸では、知的生命の進化が起こっていない。 何故か、絶海の孤島とも言える、この島でのみ進化が起こった」
「彼等は、こちらの大陸にも進出しているのかな?」
「いや、私の調査時点では、この大陸には未踏だった。 彼等の文明レベルは、やっと金属器を扱う様になったレベル。 船による外洋進出は行われているが、如何せん大陸までは距離が離れすぎている。 この距離を無寄港では、かなり未来にならなければ、進出は無理だろう。 先程も言った様に、彼等の総数は4万人程度、この島の大きさでは、これ以上の人口増加には耐えられないと考えられるし、適正な人口なのだと思う」
「大陸側の生態系は調査されたのですか?」 ロームは“腑に落ちない”とでも言いたげに、ノブオに質問を投げ掛けた。
「ああ、島の2種族と共通の祖先を持つだろうと思われる生物は居たよ。 しかし、DNAの分析では、分岐したのは数千万年前、恐らく以前は大陸と島が隣接していた時代が有ったのだと思う。 数千万年の期間で大陸と島で大きな進化の違いが生まれたって事だとは思うが・・・」
「まあ、この惑星の進化論は別の機会に議論するとして・・・親父、次のゲームはいつやる見込みなんだ?」
「おお、ちょっと待てよ」 ノブオが小型の端末を操作すると「おっ」 と声を上げた。
「良いニュースだ。 ゲームは4日後だ」
「4日か、余り時間が無いな。 明日、出発したとして、現地に着くのは1日前だな」
「確かに、良いニュースですが、もう少し準備期間が欲しかったですね。 少なくとも、現地での調査期間は有る程度・・・」
「ローム、まあ、いつもの事だが、ぶっつけ本番で行こうぜ」
「そうですね、アキラと組んでから、周到な準備が出来たミッションは有りませんでしたからね」
「ローム、アキラ、今回は私が同行するのだ、“大船に乗った様なもの”だよ」
「今のも、TERAの諺ですか?」
「そうだ、ローム。 大きな船で動きが鈍いって言う意味さ」 アキラがからかう様に解説した。
「こら! アキラ。 嘘を教えるな! ローム、“安心しろ”って言う意味だよ」
「そうですか。 今度ばかりは、ノブオの言葉に、若干信頼感がありませんね」 いつも通り、ロームが無表情で感想を述べた。
 これには、ノブオもユリカもアキラも、腹を抱えて笑うしかなかった。

ロームの涙

 翌朝、アキラは二日酔いで目が覚めた。 気分が悪く、胃の具合も悪い・・・吐きそうだった。
 目覚めのシャワーを浴びると、少しはマシになった。

「お早う」 リビングに降りると、既にロームが朝食を摂っていた。
 ユリカは、ロームの為に、大量のサラダを用意していた。
「あれ、親父は?」
「ノブオは、用事が有るって言って出掛けているわ。 直ぐに戻ると思うわ」
「そうか・・・お早う、ローム。 昨日は飲み過ぎちゃったよ」
 ロームは、悪戯っぽい眼差しで、アキラを見上げながらサラダを食べていた。
「アキラ。 貴方も早く食べなさい。 もう直ぐ、お婆さんが着くわよ」 ユリカがアキラを促した。
「ああ」 アキラが無言でサラダとパンを頬張っていると、玄関のチャイムが鳴った。

「アキラ、お婆さんよ。 お迎えして」
「分かった」 アキラが玄関に向かおうと立ち上がると、ロームも緊張して立ち上がるのを感じた。

「アキラ!」 お婆さんのマリアは、アキラの顔を見ると喜びの声を上げ、ゆっくりとハグをした。
「お婆さん! お元気でなによりです」 さすがのアキラも、敬語になっている。
「こちらが?」 同じく迎えに出たロームを見て、マリアの顔がほころんだ。

「貴方がロームね。 タラに、妹のユリアの娘に・・・そっくりね」
「私は・・・ロームです」 ロームがぎこちない挨拶をすると、右手を差し出した。
「ああ、ローム」 マリアは、ロームの右手を両手でしっかりと握りしめ、ゆっくりとハグをした。
 少し驚いた様に体を固くしたロームの両目からは、大粒の涙が溢れだしていた。

「お婆さん。 さあ、中へ入って下さい」 アキラが、二人をリビングに誘った。

「お母さん。 お変わりなく」 ユリカもマリアとハグをする。
「ユリカ。 相変わらず若いわね。 羨ましいわ」
「お母さん。 確かに、私とノブオは20年・・・浦島太郎みたいな事になっちゃったけど」
「浦島・・・太郎・・・それもTERAの諺ですか」 また、ロームが不思議がっている。
「いや、”浦島太郎“は日本州の古い物語の主人公さ。 父さんや母さんと同じ様に、時間の進みが遅い不思議な世界を旅した男の話なんだ」
「そうですか。 TERAでは、あの様な事件を予見していたのですね」
「いやいや、そう言うのじゃなく、夢物語、SFだよ」
「アキラ、ちょっと違うんじゃない」 ユリカがロームに説明し直す。 「浦島太郎は、私達の様に時間の進みが遅い世界を体験し、家に戻った時には誰も知っている人が居なくなってしまったの。 悲しい物語よ。 私達は、アキラとロームのお陰で、こうやってお母さんもアキラも居るうちに帰って来られたけれど」
「そうですね。 ユリカの言う様に、あの事件はラッキーな結果で良かったです」 いつも通り、ロームは無表情に感想を述べた。

「さあさあ、お母さん、ソファーに掛けて下さいな。 お茶を入れるわ」
 マリア、ユリカ、アキラとロームは、ソファーで寛ぎながら会話を再開した。
「マリア」 ロームは改まって話を始めた。 「私の母、貴方の妹の娘は、私を身籠った事が原因で、命を失いました。 私の父であるTONA人との混血が、母の体に致命的な障害をもたらしたのです。 私を生まんが為・・・貴方の妹の娘は命を落としたのです。 申し訳有りませんでした」
「ローム・・・ノブオさんから話は伺ったわ」 マリアはロームを見据えながら、話を続けた。

「私の妹、ユリアはTERAの連邦政府で働いていたわ。 同じ連邦政府の男性と結婚し、貴方の母であるタラを生んだ。 私もタラには何度か会ったわ。 凄く意思の強い子で・・・ユリアの反対を押し切って銀河連盟の調査局の仕事に就いたの。 私がタラに最後に会ったのは、調査局に赴任する直前。 それが最後になってしまった」
「母は・・・調査局の仕事で、私の惑星TONAの担当になって、TONA人の急激な出生率減少の原因調査を行った。 その時に、父と知り合い、私を身籠ったのです。 改めて申し上げます。 私を身籠ったが故に、母は死んでしまいました。 私の命と引き換えに・・・」
「ローム、はっきりと言います。 何も気にする必要は無いし、貴方が謝る事を、私も・・・そしてタラも・・・望みません。 ローム、貴方を生むことをタラは望んだのです。 それが、タラの意志だったのです」
 マリアは、ロームの両手を強く握り、ゆっくりと話を続けた。
「人は、皆、自分の信念に基づいて生きています。 その信念の為ならば、自分の命以上に大事な事も有る。 タラにとっては・・・それが貴方だったのでしょう。 ローム、タラの為にも一生懸命生きてね」
 ロームの両の目からは涙が止めどなく溢れていた。
「TONA人は人前では泣きません。 感情をコントロールする事を生まれた時から教育されるのです。 私は、今、自分の感情をコントロールする事が出来ません。 自分が半分TERA人である事を、今日程誇りに思った事はありません。 これからも、母、タラの意志を継いで、精一杯生きていくと誓います」
 マリアの両手を強く握り返すロームを見て、アキラも目頭を熱くしていた。

 これ程も感情的なロームを見たのは初めてだった。 堪えて来た感情が、マリアに促されて爆発したのだ。 心なしか、ロームの顔が紅潮している様に見えた。

 その時、ノブオが帰宅してきた。
「ああ、お母さん・・・ロ、ローム、どうしたんだ? 泣いているのか・・・TONA人が・・・驚いたな」
「ノブオ、マリアと会う機会を与えて頂き、本当にありがとうございました。 私は、マリアのお陰で、私が私を閉じ込めていた殻の存在を知り、そして殻を破る事が出来ました」
「そ、そうかい。 まあ、何が有ったのかは後でゆっくり聞かせて貰うとして・・・アキラ、ローム、ちょっとゆっくりしてられなくなったぞ、悪いニュースだ」

「親父、いったい、どうしたって言うんだ?」
「ああ、連邦政府の星間調査局に行ってNEDAの事を調べて来た。 いや~、確認しておいて良かったよ。 NEDAの今年は閏年だったんだ、1年が1日短い、結果として例のゲームが行われるのは、急いで出ても到着当日になってしまう」
「何てこった! よし、ローム、直ぐに出発しよう」
「分かりました」 ソファーから立ち上がろうとしたロームが、よろけた。
「あっ、大丈夫?」 直ぐに手を貸したユリカが、ロームと触れ、驚きの表情を示した。
「大変! 凄い熱が有るわ」
 慌てて、マリアもロームのおでこに掌を当てる。
「そうね、発熱している様ね」 マリアは元医者だった。 「無理しない方が良いわね」
「いえ、大丈夫です。 恐らく、先程、余りにも感情的になりすぎて、体温が上昇したのだと推測します。 即ち、落ち着けば大丈夫です」

「まあ、出来れば今は、一刻も早く出発したいな」 ノブオが口を挟んだ。
「ちょっとお待ちなさい!」 マリアが携帯端末で何やら確認し、ユリカに指示を出した。
「ユリカ、TERA人用の解熱剤は有るわよね、それをロームに。 TONA人にも少なくとも害の無い薬よ。 貴方の半分TERA人の血には有効かも知れない」
「ありがとうございます。 助かります」
「ローム、親父、直ぐに立とう。 探査船に戻るだけで、1日掛かっちまう」
「ああ、そうだな。 ローム、体調の悪い時に申し訳ないが、出られるか?」
「ええ、勿論です。 それと・・・探査船の転送装置の使用許可を先程取っていますので、今すぐに探査船に戻れます」

 驚く一同。

「いったい、いつの間に。 しかし、手際の良さには恐れ入ったよ。 どうやらアキラは、ロームのお陰で仕事が出来ている様だな」
 アキラは、顔を紅潮させながら。
「助かっているのは事実だけど・・・飽くまで、ロームがアシスタントだ!」
 ロームは、僅かに微笑みながら。
「その通りです。 私はアキラの仕事が上手く行くように、分析と段取りのするのが仕事です。 今は・・・段取りの仕事をしたまでです。 アキラ、ノブオ、参りますか?」
「OK!」 二人が声を揃えて応えると、ロームが探査船と通信を開始した。 「ジェミニ、転送開始」

 一瞬、3人の体が光輝くと、直ぐに姿を消した。
 残ったマリアとユリカ。
「もう、相変わらず、ノブオもアキラも慌ただしいわね」 マリアが両手を広げ、肩をすぼめた。
「そうですね。 でも、ロームは本当に優秀ね。 あれ以上、体調が悪くならなければ良いけど」
「そうね・・・ところで、ロームは本当にタラに生き写しだったわね。 本当に可愛い娘に育ってくれて。 アキラとも仲良さそうだし、一緒になれば良いのに。 ああ、ちょっと年が離れ過ぎかしら?」
「お母さん! ロームは女性でも男性でもないの。 TONA人は性分化するまでは、どちらにでも成り得るらしいわ。 それと・・・ロームとアキラは二つ違いで、ロームももう子供では無いわ」
「あら、そうなの」 マリアは、先程の携帯端末で何やら確認した。 「あら、本当ね。 性分化は20~40歳程度で行われる・・・生殖器の成熟と消滅・・・発熱・・・2週間から4週間・・・ロームは幾つなの?」
「30歳だと聞いたわ」
「ふ~ん。 いつ、その時が来ても可笑しくないわね」

アキラ、ローム、ノブオの3人は惑星NEDAへと向かった。 ロームの体調は、大丈夫なのか!
                            第6話 第3章へ続く

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