プロローグ

 探査船のコントロールルーム。 会議テーブルで、コーヒーを飲みながらアキラとロームが雑談をしていた。

「TERAまでは、後約36時間。 34時間15分後に重力波航行から通常航行に移行します」
 2人は、部長のワダから指示された惑星NEDAの調査に先立ち、TERAに立ち寄りアキラの両親と会う為に航行中だった。
「了解。 しかし、探査船での移動中は時間感覚が狂っちまうよな」
「そうですね。 この探査船でも時間毎の照明変更システムは適用していますが、やはり自然光では有りませんので少し違和感が有りますね。 生物は・・・当然ですが、生活のリズムがそれぞれの惑星の自転に支配されるのは致し方有りません。 睡眠の必要性も含めてですが・・・」
「そう言えば、どうしてTONA人の睡眠は少なくて済むんだ? 俺が知る限り、君が俺より長く寝ていた事は無いよな?」
「そうですね・・・TERAの人類は、進化の過程では夜行性の時代も有ったのでしょうが、生態的地位の向上で夜間に連続して寝る事が出来る環境を得たと言う事でしょう。 しかし、TONA人は進化の初期段階で永く被食者の立場に有った事に加え、草食で有った事が大きな違いでしょう。 TERAでも、草食の哺乳類に見られる様な睡眠法を・・・TONA人は得ていると言う事です」
「まさか、立ったまま寝ているのかい?」
「それは極端な例ですが、短時間の睡眠を小まめに取る事で脳を休める事が可能だと言う程度です。 当然ですが、連続して熟睡する事も出来ます。 完全に安全な環境ならば、ですが」
「もしかして・・・探査部の仕事は、完全に安全な環境じゃ無いって事かい?」
「そう申し上げている訳では有りません。 単に、使い分けているだけです。 TERA人から見れば、半覚醒と言った状態で睡眠と同等の効果が得られるのです」

 その時、テーブルのコーヒーカップが僅かに振動し、コーヒーに波紋が浮かび上がった。
 アキラとロームが顔を向き合わせると同時に、振動が激しくなった。

 突然の衝撃だった。 アキラとロームは、椅子から飛ばされるように倒れ込んだ。
「おい! ジェミニ! いったい何が起こった?」 アラーム音の鳴り響く中、アキラが叫んだ。
「フメイ デス。 ジュウリョクハドライブ ガ トツゼンテイシ シマシタ」

「システムの異常ですか?」 コントロール装置のモニターを確認し、ロームが状況把握を行った。 「重力波航行から離脱し、慣性航行になっていますね。 周辺には磁気嵐や重力異常も認められません。 進路上は・・・当面、危険は無い様です」
「ジェミニ、まずは原因を探れ。 ローム、俺達も調査しよう」
「分かりました。 と言っても、何から手を付ければ良いか・・・」
「俺は船外から船体の損傷が無いか確認する。 ロームは、船内の航行システムに関係するハードのチェックを頼む。 ジェミニはシステム系からしか確認出来ない。 センサーが検知出来ないハード上の損傷が原因かも知れない」
「分かりました」

「ジェミニ、小型シャトルを1機用意しろ。 外から見る」
「リョウカイ デス」

 小型シャトルに乗り込んだアキラは、直ぐに3Dスキャナを作動し、船体の外観チェックを始めた。
「よ~し、設計図と比較して差異が有る部分をハイライトしろ」
 シャトルのコントロールディスプレイに船体の設計図とスキャン画像が重ねられて表示された。 数か所に点滅している箇所がある。
「よし、近付いて確認だ」
 アキラの操作で、探査船の船体前方から順に目視での確認を始める。

 殆どは船体外殻の軽微な変形だったが、船体中腹のスラスター1か所の蓋と後部の推進ノズルの一部に疲労に起因すると思われる僅かな亀裂の伝播が見られた。
「これが原因かな? しかし、この程度で・・・破断している訳でもないのに。 おい、ローム。 そっちはどうだ?」
「はい、アキラ。 推進ノズルと重力波ドライブの接続部で、1本のダンパー軸の僅かな損傷が見られました。 ですが、多重にバクアップされていますので、この程度で重力波航行に支障をきたすとは思えないのですが」
「確かにそうだな。 しかし、俺達で出来るのはここ迄だな。 直ぐ戻るから、原因究明と対策を相談しよう」

 アキラとロームは、コンソールルームの会議テーブルに集まっていた。
「アキラ、昼食がまだでしたね。 何かご用意しましょうか?」
「ああ、そうだな。 サンドイッチでも貰おうか。 それとコーヒーを頼む」
「ミルク入りですね。 用意します。 座っていて下さい」

 ロームは、テキパキとフードディスペンサーを操作し、レンジからサンドイッチとコーヒーを取り出した。

「サンドイッチは、TERA製のハムを挟んでおきました。 マスタードも効かせていますよ」
「ああ、お気遣いありがとう。 ところで、船外・船内で幾つかの損傷は発見されたが、いずれも重力波航行を突然停止させてしまう程の重大な損傷じゃなかった。 ジェミニの調査結果はどうだったんだ?」
「ハイ、コウコウ サブシステムガ ドライブヲ テイシシタ リユウハ、ドライブ ノ カンカデキナイ シンドウ デシタ」
「しかし、ジェミニ。 何故航行システムが停止を判断するまで分からなかった?」
「アキラ、ワタシハ タシカニ、コノフネノ センサーガ ケンチスル スベテヲ シルコトガ カノウデス。 シカシ、ジョウジ スベテヲ カンシシテイル ワケデハ アリマセン。 ジュウリョクハ コウコウシステムハ、センヨウノ サブシステムデ カンリ シテイマシタ」
「それに、アキラ。 正確には慣性航行中です。 停止はしていませんよ」 ロームが右の眉を吊り上げながら、ジェミニを擁護するかのように口を挟んだ。
「あ、ああ。 そうだったな。 済まん。 しかし・・・振動発生の原因はなんなんだ? ダンパーの損傷か?」
「先程も申し上げた様に、たった1本のダンパーが・・・例え破断したとしても、重力波ドライブが瞬時に停止になる事はありません。 恐らく・・・」

「恐らく? どうした、何か思い当たる事でも有るのか?」
「はい、直接の原因が不明である以上、複合的な原因だと考えられます。 外部のスラスター蓋の疲労亀裂、後部ノズルにも同様に疲労亀裂、船内のエンジン接続部ダンパーの僅かな変形、これらの複合作用によって重力波ドライブ又は船体に振動が発生した。 これは、テーブルのコーヒーが波だった事で、私達も実感しましたね」
「成る程、その振動は通常なら航行システムによるソフト面での微修正で収束するが・・・偶々今回のケースでは収束せず、逆に発散に転じた」
「サブシステムハ、ソノシンプクガ キョヨウチヲ コエルト ハンダンシタノデス」
「成る程な、そうと分かれば・・・ジェミニ、修理を頼む」
「アイアイサー」

「必要時間は?」
「12ジカン±15フン テイドデス」
「分かった。 ローム。 と言う事で、ここで12時間足止めだ。 少し周辺の探査でもしてみるか?」
「えっ、ええ。 私は構いません。 しかし、ここは銀河系の腕と腕の間。 殆ど何も存在しませんが」
「だろうな。 それでも良いじゃ無いか。 暫し宇宙デートでも楽しもうぜ」
「デート・・・ですか?」 ロームは明らかに、驚いた様に反応した。
 アキラは少し頬を赤らめながら、大きな声でジェミニに指示した。
「探査機を用意しろ!」

興味をそそるもの

 探査機を発信させ探査船を外から覗くと、既にジェミニの遠隔モジュールが外殻の修理を始めていた。

「ジェミニに任せっきりで申し訳無いですね」
「まあ、気にするなよ。 それが彼の仕事だし、俺達が居たって邪魔になるだけさ」
「確かに、そうですね。 船外活動も・・・無重力では難しいですからね」
「あ、ああ。 ところで・・・ローム」
「何ですか?」
 ロームがアキラに顔を向けると、アキラは伏し目がちに呟いた。

「た、体調は問題無いか? 休暇の前は少し熱っぽかった様だったが」
「ええ、特に問題有りません。 メディカルにも行って、解熱剤を貰いましたが、服用するまでもなく、現在は平熱です。 休暇もゆっくりとさせて貰えましたし。 もしかして・・・」
「えっ・・・」 アキラがロームの目をチラ見した。
「気にして下さっていたのですか? だとすれば、ありがとうございます。 もう、大丈夫です」
「あ、ああ、そうか・・・元気になって、良かったよ」

「ところで、アキラ。 どこを調査しましょうか?」
「この周辺の状況は?」
「先程も申し上げた様に、銀河の腕と腕の間です。 恒星も疎らですし。 モニター出来る範囲で・・・半径数千光年の範囲には興味をそそる様な現象は見られません。 因みに、右側に見えるのが連盟中央府側、左側がTERAの存在する腕ですね。 当然、NEDAもそちら側です。 そして、正面が銀河系の中心部です」
「あの中に巨大なブラックホールが存在する訳だな」
「そうですね。 ブラックホールに関しては、まだ不明な点は有りますが・・・調査するには危険な星域と言う事になりますね。 恒星の密集度も高い」

 アキラはぼんやりと銀河の中心を眺めていた。
 ロームも、アキラの顔から眼を離し、コンソール正面の窓から銀河の中心を眺めた。

「美しいですね」
「ロマンティックってやつだな」
「ロマンティック・・・ですか?」
「ああ、何て言うか・・・」
 アキラはロームの横顔を覗き込み、無意識にロームの頬へと手を伸ばしかけていた。

「うん・・・あれは?」 ロームが呟いた。
 アキラは思わず手を引っ込めた。
「どうした、ローム?」 アキラも改めて窓から外を眺める。
「ほら、銀河中心部から僅かに右側。 星が見えない部分が有ります。 しかも、円形に」
「ええっ? 俺には見えないぜ」
「拡大しましょう」

 ロームがコントロール装置を操り、モニターに表示させた。
「10倍に、いや100倍に拡大します。 ほら、ここ、やはりほぼ円形に星の無い部分が有る様に見えます」
「おいおい」 アキラは、窓の外の肉眼の景色と、モニターの画像を交互に見ながら、感嘆の声を上げた。 「これが見えたのか? 凄いな、恐れ入ったよ」
「TONA人はTERA人より遠目が効きます。 網膜の細胞密度が高く、レンズも意図的に望遠に変形させる事が出来ますので。 祖先が、捕食者から逃れる為に身に付けた能力です」
「そ、そうだったな。 しかし、良く見付けられたな」

「少し興味を引く現象です。 調査しませんか?」
「OK。 近付いてみよう。 ところで、ジェミニの方は?」
「ええ、順調な様です。 ジェミニ、少し探査船から離れます」
「リョウカイ デス・・・コチラノ シンチョク・・・ズイジ ホウコク・・・」
「少し雑音が入る様だな?」
「そうですね。 何故でしょうか?」

 探査機を進めると、アキラの目にもはっきりと見えて来た。
 銀河の星々に円形の空白地帯が見られる。

「驚いたな・・・ブラックホールなのか? それともワームホール?」
「いいえ、重力異常は見られませんね。 そもそも、ブラックホールで有れば、膠着円盤が見られる筈です。 重力レンズ効果も見られません。 反射波が帰ってこないので、距離も大きさも正確には測れません。 背景が見えないので存在を知覚出来ますが、何なのか分かりません。 何時から存在するのか分かりませんが、仮に相当古くから存在していたとしても、気付かなかっただけかも知れません。 そもそも、この星域で通常航行をする事は有りませんからね」
「ドローンを使ってみるか。 近付けば何か分かるかも」
「ええ、そうですね。 ですが、まだ距離が離れすぎています。 推定375憶㎞」
「えっ!? 何故分かる? センサーが効かないんだろう」
「飽くまで推定です。 対象は円形の空白部分ですが、近付くほどに大きく見えています。 詰り有限の空間で物理的なサイズがある。 この探査機の移動距離と、あの円形の視野角の変化から、直径で約150憶㎞と想定しました。 もし、対象が球形だと仮定すれば・・・最初に発見した時から常に円形に見えていますので、恐らく間違い無いとは思いますが。 球形だとすると、その中心からの距離は450憶㎞程度、半径が約75憶㎞ですので球の表面までは約375憶㎞」
「流石だな。 しかし、直径150憶㎞って言えば、太陽系のヘリオポーズ並みの大きさだ。 まさか、星系がスッポリ入っているんじゃ無いよな」
「容易に想定出来ますね。 しかし、銀河連盟の技術力では到底不可能。 自然現象だとしても、初めての発見です。 ますます、興味がそそられますね」
「ああ、そうだな。 よし、推定50万㎞程度まで近づこう」
「ええ、ですが少し気になる事が」
「どうした?」
「ジェミニとの通信にかなりのノイズが入る様になりました。 或いは、前方の球体の影響かも」
「ますます気になるな」
 アキラはロームと見詰め合った。
 アキラを見詰めるロームの目は、僅かに微笑んでいる様に見えた。

 探査機の船窓から見える景色は、一面が真っ黒だった。
「やはり、何等反射が有りません。 ほぼ全ての周波数の電磁波を吸収している様です。 ジェミニとの通信も、相当の雑音が入る様になりました。 最早、正常な交信は無理ですね。 やはり、あの球体の影響と言う事で間違い無いですね。 しかし不思議です。 何等の発信も検知出来ないのに・・・雑音の原因がまったく分かりません。 ただし、この謎の球体からの距離により影響度が変化する事だけは間違い無いですね」

「恐れ入ったな。 これじゃ何も分からないな。 まあ、兎に角ドローンを出そう」
「はい、ドローン3機を射出・・・正面に分散させます。 探査機からの距離、10万㎞、20万km、30万km、よん・・・あっ、3機とも破壊されました」
 暗黒の空間に、3か所の輝きが灯った。
「少なくとも、撃ち落されたって感じじゃなかったな」
「壁に当たった・・・としか思えませんね」
「この探査機から約32万km前方。 3機のドローンが、ほぼ同時に破壊・・・詰まり、壁に当たって破壊したのだとすれば・・・あの壁はやはり直径約150憶㎞の球体です」
「直径150憶㎞! 目の前に存在するとは言え、信じられん」
「ええ・・・ですが、見た目のサイズも、爆破した3点間距離と曲率から推算した結果も、ほぼ同サイズで一致しています」
「あ、ああ・・・しかし、こんな現象は確認された事が無いな。 とは言え、現実が目の前に有る訳だしな」
「ええ、そうですね。 少なくとも、銀河連盟には直径150憶㎞の球形の構造物を構築する技術は有りません」
「しかし、一体誰が? 何の目的で?」
「やはり、このサイズですので、星系そのものを保護している可能性が考えられますね」
「確かに。 太陽系なら、余裕でスッポリ収まるサイズだからな。 保護・・・もしくは、隔離かもしれいけどな。 よし、もう少し近付いてみよう」

侵入

「シールドの手前、約5万㎞付近です。 やはり反射が得られないので・・・推定ですが」
「向こう側が見えないから存在は分かるが・・・仮に物体が近付いて来ても俺達には分からないな」
「そうですね。 もし、相手に敵意が有れば・・・危険ですね」
「うむ、慎重に調査しよう」 その瞬間、遠くで何かが壁に衝突した様な閃光が目に入った。

「何がぶつかったんだ?」
「隕石です。 先程から観測していましたが、頻繁に隕石衝突が発生しています。 殆どは非常に小型の天体・・・小石程度のものと思われますが、稀に比較的大きなものは今の様に目視で閃光が確認出来る様です」
「隕石ね・・・そうだ、ローム。 この球体との衝突コースにある隕石を確認して呉れ。 出来るだけ大きい方が良いな」
「そう来るだろうと思って、モニターしていました。 2万㎞左上方に5分後、その更に5万㎞先に1時間後。 後の方が大きいです。 最大径で約15km」
「流石だなローム。 良し、先に衝突する方を見に行こう。 近付くぞ!」

 探査機を移動させ、衝突予想ポイントが目視出来る所迄近付いた。
「アキラ、予想通りの進路で隕石が近付いています。 隕石のコースは、想定外の重力影響を受けていない事を示しています。 衝突まで、凡そ10秒程度です」
「最大望遠で記録して呉れ」

 隕石は物体と接触し表面が蒸発しながら、まるで水に沈む様に物体の内側へと呑み込まれていった。
「おい、通過しなかったか?」
「ええ、その様に見えました。 物体の表面は膜状の様です。 その膜或いはシールドと隕石とが反応している様でしたが、隕石を消滅させる程には至っていなかったですね」
「ああ、しかもシールド通過の際の閃光は短時間で終わっていた。 シールドは薄い膜の様なもので間違い無いな」
「その推定に異論は無いですが、飽くまで推論です。 アキラ、貴方の考えは予想が付きます。 賭ける価値が有るとお思いですか?」
「ローム、俺の答えは決まっている。 だが、君までリスクを冒す必要は無い。 俺だけで行ってみるよ」
「アキラ、惑星探査部のルールをご存知ですよね。 調査は最低2名以上で行う事。 私もリスクよりも興味の方が上回っています。 TERAの・・・血のせいだと思います」
 ロームが笑みを漏らした。

 アキラは、ロームの目を見据えた。
「次の隕石とのコンタクトルートへ移動する。 隕石の中に身を隠すぞ」
「了解です。 ですが、中に入るとジェミニとの交信が完全に出来なくなる可能性が高いですね」
「ああ、多分な。 良し、念の為ここに発信機を残そう。 俺達が戻れなった場合に10時間後にアラームを発する様にセットして呉れ。 アラームなら多少ノイズが乗っていても気付くだろう」
「分かりました」 ロームがコントロール装置を操作し発信機をセットした。 「射出します」
「OK、それじゃ中に突入するとするか。 隕石とのランデブーコースに進む」

 巨大な隕石の周回を廻り、表面をスキャンした。
「楕円球型、長径約15㎞、短径約10㎞。 アキラ、お誂え向きの亀裂が有ります。 隕石の内部3㎞程度まで入れます」
「良し、侵入する。 結構狭い、シールドを最大に!」
「了解」

 隕石内部の空洞を進み、比較的大きなスペースで探査機をアンカーで固定した。
「固定完了っと。 ローム、後どれくらいだ?」
「凡そ5分程度で球体の表面に達する見込みです。 この隕石のコースは、球体内部に重力の特異点が無い限り・・・はっきり申し上げて、内部が全く分かりませんので、極めてラフな試算ですが・・・8時間程度で球体表面に再突入してシールド外に出るルートです。 殆ど掠めるような軌道です」
「お誂え向きだ。 8時間有れば充分だ。 出来るだけデータを取ろう」

「後、30秒程度・・・衝撃に備えて下さい」
 球形のシールドに達する迄の、凡そ30秒。 アキラとロームは互いに見つめ合っていた。
 その時、隕石が激しく振動した。
「入りました! そして・・・通過した」
 振動は瞬時に収まった。

「良し、それじゃアンカーを外して、出てみよう」
 隕石の洞窟から抜け出すと、息を呑む様な光景だった。
「隕石の表面が溶けている・・・」
「ええ、スキャンによれば、隕石表面の厚さ500m程度が蒸発した様です」
「ふ~っ、改めて驚いたな。 探査機のシールドだけだと、持たなかったかも知れないな」
「そうですね。 しかし、私達は侵入しました。 さあ、出来るだけデータを取りましょう」

謎のシールドに突入した2人。 果たして、内部には何が存在するのか。
                             第5話 後編に続く

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