惑星EDENへ
「探査機で降りるぞ。 一応、各自、麻痺にセットしたフェザーを携帯しよう。 ジェミニ、護衛用の遠隔操作ユニットで同行して呉れ」
「リョウカイ デス」
12人乗りの探査機に、アキラ・ローム・ディプロとジェミニの遠隔操作ユニットが乗り込んだ。 ジェミニの遠隔操作ユニットは、見掛けは手足の長いヒューマノイド型だが、恐ろしく俊敏に動く事が出来る。 頼もしい、護衛だった。
「地表の大気は、呼吸に支障ありません。 有害な菌類・ウイルスも検知されていません。 目的地周辺の10km圏内には、大型の肉食生物は居ない様ですが、小型のものは補足しきれませんので、注意願います。 予防として、防御型スーツを着て降りましょう」
「分かった。 用心に越した事はないな」
「目的地上空1万mだ」
目的地が見えて来た。
「想像以上だな! まるで人工的に植林したみたいだ」
目の前には、直径数キロの巨大なクレーターを、整然と埋め尽くす巨木が見えて来た。
「アキラ、進行方向に向かってクレーターの3時方向に平坦な地形があります。 あそこに着陸しましょう」
探査機を草原の様になっている場所に着陸させ、アンカーで固定した。
「ローム、周辺の状況は?」
「はい、4基のドローンに走査させていますが、特に異常や危険はなさそうです。 動きのある大型生物も見当たりません」
「OK、それじゃ降りよう」
探査機のハッチを開け、4人とも地上に降りた。
ディプロは周囲を見回し、しばし感慨に浸っていた。
「ディプロ、大丈夫か?」 アキラが心配して声を掛けた。
「ああ、大丈夫だ。 少し感傷的になってしまった。 さあ、調査を始めよう」
クレーター方向に歩き、改めてクレーターの全貌を見渡した。
「凄い光景だな! まるで植林した様に、綺麗に木が生えている。 いや、木と言って良いのか・・・大きいな」
高さは10m程だろうか、枝は無く、最上部に僅かな膨らみが見えていた。
クレーターの中心部から、放射状に木が生えており、しかも各列がほぼ直線だった。
「いくら何でも異常だな。 これが自然に出来たとは考えられない」
「アキラ、事実は小説より奇なり・・・貴方が良く口にしていますね。 思い込みで調査を進めてはいけません」
「わ、分かっているよ! 中心部までは2~3kmは有りそうだが、行ってみよう」
木と木の間を通り、皆で中心部を目指して歩き始めた。
「しかし、どの木もほとんど同じ様な大きさだ。 枝葉が無い事から考えれば、地下からの養分だけで成長しているんだろうな。 ディプロ、前からこんな木が有ったのかい?」
「いや、私も初めて見る植物だ。 以前の惑星には、似た様な枝の無い植物で、光や電磁波に反応する小さな植物は有ったが。 鉢に植える程度の大きさだったよ」
「どんな反応だったのですか?」
「ああ、その植物の花弁に光や電磁波を当てると、極めて微弱だが植物の茎に電気が流れるのだ。 子供達の学校での勉強材料に良く使われていたよ。 光と電磁波、電波は波長が異なるだけで同じ様なものなのだと学ぶのだ」
クレーターの中心部までやって来た。
「本当に壮観な眺めだな。 見渡す限り、同じ木が整然と並んでいる。 まるでパラボラアンテナだ!」 アキラが伸びをしながら感想を口走った。
「それです!」 ロームが、突然大きな声を上げた。 「アキラ、ディプロ! 最初に見た時に思ったのです。 まるでアンテナの様だと」
「ああ、ローム。 確かに見た目は似ているが」
「直ぐに調べます」 ロームは、数本の木の茎にセンサーを差し込み、何かしら調べ始めた。
「やはり、その可能性が高いですね。 センサーを接続した、この数本の木は地下茎で繋がっています。 導体と言える程度に通電性が良い」
「何か信号は流れているかい?」
「いいえ・・・今は、特に」
「ふむ、まあ、半信半疑ってとこだが。 良し、幾つかにセンサーを繋いで、様子を見よう」
各種のセンサーを設置し、探査機に戻って来た。
「結構疲れたな。 外も暗くなってきた。 ディプロ、ジェミニ、申し訳ないが俺とロームは食事にさせて貰うぜ」
「どうぞ、遠慮無く。 私は、少し外を散歩させて貰うよ。 念の為、ジェミニに同行願っても良いかな」
「OK。 ジェミニ、護衛を頼む」
二人が探査機を離れると、アキラとロームは食事を摂る事にした。
「ディプロも、じっとしていられない様だな」
「ご自身の故郷なのです。 既に同胞を失ってはいても、懐かしいのではないでしょうか」
「まあ、色々と考える事も有るだろうな」
「ええ、さあ、食事にしましょう」
「ああ」
二人は食事を済ませると、コントロールルーム後方のテーブルで待機していた。
アキラは眠気が襲って来たのか、ウトウトと船を漕いでいた。
その時、設置したセンサーからのアラームが鳴り、アキラは飛び起きた。
「どうした!」
「センサーが信号を検知しました。 あっ、あれを見て下さい」
探査機の窓から見える、クレーターの木々に動きが見えた。
木の頂点にある膨らみが徐々に広がり、大きな花を開いたのだ。
花は僅かに輝き、ボウっと鈍く光っている。 クレーター全体の花が一斉に開いた事で、クレーター全体が白く淡い光で満たされていた。
その時、ディプロとジェミニが戻って来た。
「凄い事が起きているな! あれはなんなのだ! 花が開いている」
「そうだな。 ローム、センサーの反応は?」
「ええ、微弱な電流が茎を流れています。 これは! 何か電波を受信している様です」
「全て記録しろ! ローム、このクレーターの向きを確認して呉れ」
「アキラ、間違い有りません。 電波を受信しています。 銀河連盟の様々な通信が・・・あれは、やはり巨大なパラボラアンテナだったのです」
「アンテナの向きは?」
「銀河連盟の中央府ステーション方向を向いています。 しかし、自転していますので、正面を向けるのは一瞬です」
「アキラ、ローム! あれを見ろ」
ディプロの声に二人は窓越しにクレーター側を見た。
「花が、閉じ始めている。 じゅ・・・受信可能範囲だけ開いたのか?」
「恐らくは・・・あの木には、向きを変える自由度が無い。 最大の受信感度が得られる一瞬にアンテナを開いたのではないでしょうか。 その方が、使用するエネルギーも最小で済みます」
「まさか、そんな。 そんな緻密にコントロールされていると言うのか?」
「仮説を申し上げただけです。 得られたセンサーのデータを解析してみたいと思います」
「そうだな。 一度、落ち着いて状況を整理しよう。 ところで、ディプロ。 貴方の肩に乗っているのは・・・猿か?」
「えっ、ああ。 先程の散歩中に遭遇したのだ。 ジェミニの素早い動きでも捕獲出来ないほどすばしっこい。 何故か私に懐いてね。 中々離れて呉れないので、連れて来てしまった。 不味かっただろうか?」
「ローム、生化学チェックを頼む」
「はい」 ポータブルアナライザーのセンサーをかざし。 「特に保菌してない様です。 この様子ですと、無害と言って良いでしょう」
「OK、ディプロ、構わないよ」
「おお、アキラ、ロームありがとう。 とても未知の世界の未確認生物とは思えなくてね」
新たな事実
「設置していたセンサーから得られた事実は、以下の通りです。 まず、あの木・・・いいえ、実際は巨大な草花でしたが・・・はアンテナの役目を果たしていました。 しかも、巨大なクレーターに整然と配置されている事で、巨大なパラボラアンテナと同様に機能していました。 恐らく、ディプロが言っていた植物が、5,800万年の進化の末に、あの様な巨大な姿に進化したものと推測します」
「脅威だな」
「ああ、私にも信じられないが・・・そうとしか考えられないだろう」
「この固定式のパラボラアンテナが銀河連盟の中心部を向く一瞬に、花を開き到達する様々な通信波を受信しています。 受信能力はアンテナが大きいだけに極めて優秀です。 先程、我々のセンサーが得たデータは、明らかに銀河連盟の通信波である事を示していました。 極めてクリアに受信出来ています」
「恐れ入ったな、植物アンテナって訳か。 いったい誰が?」
「その事ですが・・・センサーからは新たな情報も得られました。 まず、あの花が地下茎で相互に接続されている事は先程申し上げた通りですが、中心部に情報が集約され更に地下深くに伝送されています。 また、あの花以外の周辺の植物も、全てが地下茎で接続されており、微弱な電気的信号のやり取りを行っている事が分かりました」
「ローム、すると、この大陸の全ての植物が相互に接続されていると言うのかね。 途方もない話だな」
「大陸全域を調査した訳では無いですが、ほぼ間違い無いでしょう」
「それと、地下深くにって言っていたな」
「ええ、そこで地殻のスキャンも新たに行ってみました。 これです」
会議テーブル上に、クレーター直下の地殻情報が3D表示された。
「これは?」
「そうです。 クレーター中心部の地下茎は、更に地下深くに繋がり、この太いケーブルと接続されています。 このケーブルは、明らかに人工物です」
「これは・・・恐らく、光ファイバーケーブルだ。 前にも言ったと思うが、この地域は、惑星最大のデータセンターが有った場所だ。 当時、惑星上の主要な各都市は、この光ファイバーケーブルで接続されていた。 まさかとは思うが・・・この花は、このケーブルを利用している。 恐らく、この花の進化の過程で、もともと存在した光ケーブルが利用出来る様に進化したと言う事だろう。 正に脅威だ」
「恐らく、ディプロの仮説は概ね間違って無いでしょう。 ただ、このクレーターアンテナは受信専用です。 どこかに発信用が有ると考えられます。 それと、一体誰がこれをコントロールしているのか? と言う疑問が残ります」
「ケーブルの接続ルートは分かるか? ルートに沿って、重点的に調査しよう」
「分かりました。 全球スキャンデータに表示させます」
テーブル上の3D画像が、大陸全体を描き出した。
「確かに、金属の多い地層分布を接続する様に光ファイバーケーブルが通っているな。 それに、各拠点の周囲に網目状に細いケーブルが張り巡らされている」
「あの植物が進化する前から、すでにケーブル網が存在した。 あの植物は、この環境に適応したんだな」
「この幾つかの拠点のどれかが発信装置の筈だ。 拡大して見てみよう」
3人は、比較的大きな網目の地表を丹念に確認し始めた。
「これと言った特徴的な構造が見られないな。 困ったな、虱潰しに調べるとなると、とんでもなく時間が掛かっちまう」
「アキラ、パラボラアンテナは受信専用でした。 そう言えば、アキラのご両親もクレーターを利用していましたね。 生物の考える事は同じと言う事でしょうか?」 ロームは、軽いジョークを言った積りの様だったが、アキラの反応は薄かった。
「失礼しました。 続けます。 次のターゲットは、発信側ですが、彼等は惑星外からの通信を受信した事で、惑星外文明とのコンタクトを目指したものと考えられます。 もし、そうだとすれば、広範囲に拡散し直ぐに減衰する様な方法より、より指向性を高めようとするのでは無いでしょうか? だとすれば、高いタワーか・・・」
「垂直な深い穴・・・か。 良し、その観点でもう一度見てみよう」
3D画像をゆっくりと操作し、丹念に調べ直した。
「これだ! これを見て呉れ! かなり深いな」
3D画像に決して大きくは無いが、垂直な竪穴が存在する場所が有った。
「行こう!」
新たな発見
上空から見ると、直径20m程の竪穴に周りの木々へと放射状に地下茎が伸びているのが肉眼で分かる。 穴の周囲は、直径100m程の範囲で円形に木が生えていない状態になっていた。
「恐らく、これで間違い無いでしょう。 アキラ、着陸しましょう」
「ああ、しかし、周りに木が無いのが気になるな。 それに、もう夕暮れだ、夜間の作業で危険じゃないか?」
「ええ、慎重に行動する必要はありますが・・・兎に角、調べましょう。 念の為、穴からは離れて停めた方が良さそうですね」
探査機を着陸させ、3人とジェミニが降り立った。
「偉く不気味な感じだな。 動物達も近付かないみたいだな」
「まずは、センサーを設置しましょう。 暗くなる前に終えてしまいたいですね。 周辺の木々にも設置しましょう。 私は穴の周辺を、アキラとディプロには周辺の木々をお願いします」
3人とジェミニは、手分けしてセンサーを取り付け始めた。
早速、ロームがポータブルアナライザーを覗き込む。
「アキラ、明らかに動きがあります。 周囲から地下茎を通して、穴の中に向かってエネルギーの流れがあります。 徐々にエネルギーの流入量が増加しており、何かしらの脈動もあります。 これは・・・或いは“情報”を示しているのかも知れません」
それを聞き、アキラにはある不安が芽生えた。
受信専用のアンテナは、1年に1度、最も受信感度の高まるタイミングで稼働していた。 発信も1年に1度だとすれば・・・あのアンテナとこの発信孔は緯度がほぼ同じだ。
「待てよ! ジェミニ、この穴が銀河連盟の中心部を向くのはいつだ?」
僅かな間を置き、ジェミニが答えた。
「2フン 20ビョウゴ デス」
「何! やばい! ローム! ディプロ! 直ぐに探査機に戻れ!」
アキラが叫んだ。 しかし、ロームが穴の近くまで行ってしまっていた。
ディプロは、更に穴の反対側で周辺の木々へのセンサー取り付けを行っている。
アキラは、ロームに向かって猛然と駆け出すと共に、ジェミニに指示を出した。
「ジェミニ! ディプロを助けろ!」
アキラの指示で、ジェミニが素早くディプロに向かって飛び出した。 数歩の跳躍でディプロまで到達し、ディプロを抱え上げた。
一方、ロームはアキラの叫び声に気付いたものの、突然発生した地盤の揺れに足をすくわれ穴に落ちかけていた。 何とか地下茎を掴み、自らの体重を支えている。
「アキラ!」 ロームの叫び声が響いた。
「ローム! ローム!」
アキラは滑り込む様に穴に向かうと、直ぐにロームの腕を握りしめた。
「ローム! 俺の腕を掴め! 早く!」 落下の恐怖に怯えるロームは、必死にアキラの腕にしがみ付いた。
アキラは、渾身の力でロームを引き上げた。 何とかロームを地上に引き上げ、すぐさま立ち上がると探査機に向かって猛然とダッシュする。
「走れ!」
探査機のハッチに飛び込むと、アキラは、急いで探査機のエンジンをスタートした。
「クソッ! スタンバイにしておけば良かった!」
エンジンは徐々に負荷を上げつつ有ったが、直ぐに発信出来る状態では無かった。
その時、ディプロとジェミニが飛び込んできた。
「ハッチを閉めろ!」 アキラが叫ぶ。
探査機の正面の窓から、穴の入り口が輝きを増す様子が見える。
「アキラ! エネルギーの流入が急激に増加しています」 ロームがポータブルアナライザーを覗き込みながら叫んだ。
地面の揺れが、探査機の脚部を通じて、更に大きくなるのが伝わって来た。
「間に合わん! 仕方ない! シールド全開! 全員、対ショック対閃光防御、目を瞑れ!」
その時、前方の穴から強烈な光柱が天空へと迸った。 探査機は、そのショック波に大きく揺さぶられ、あわや反転しそうな程揺り動かされた。
「うあーっ!」 全員が悲鳴を上げる程の激しさだった。
「大丈夫か?」 アキラは、シートから投げ出され、強かに壁に頭を打ち付け、顔をしかめながら皆の安否を確認した。 どうやら、発信は一度で終えた様だった。
ロームとディプロは、ジェミニに抱きかかえられ、難を逃れていた。
「とんでもない衝撃だったな」 ディプロがジェミニから降ろして貰い、呟いた。
「驚きましたね。 しかし、良いデータが収集出来ました」 ロームが淡々と応えた。
「馬鹿野郎! ローム、データ取りより命の方が大事だろう!」 アキラが語気を荒げ、ロームを叱り飛ばした。
「申し上げませんでした。 センサーの情報に集中しすぎていました」
「ま、まあ。 無事で何よりだったよ。 シールドを張るのが一瞬でも遅かったら、俺達全員電子レンジで体液が沸騰状態になっていたかも知れないぜ」 アキラは心底ホッとしている様だった。
「あれは・・・何だったのだ?」 ディプロがアキラに質問を投げ掛けた。
アキラは、両手で顔を拭いながら答えた。
「恐らく・・・いや、ほぼ間違いなく、銀河中心部に向けた通信波だよ」
「ええ、間違い無いでしょう」 ロームも呟いた。
「この穴は、地殻のかなり深部から、ほぼ垂直に掘られている。 この穴の鉛直線上に銀河連盟の中心部が来るのが・・・年に一度、このタイミングだったんだ。 残念ながら、彼等の努力の割には、通信波は届いていなかった様だが。 恐らく、この方法でも通信波は拡散してしまうんだろうな」
「先の調査で、受信機が確認されました。 そして、ここが発信機でした。 更に興味深い現象が見られました。 発信の直前、例の地下茎に意外な現象が見られました」
「どう言う事だ?」
「ええ、3D画像で見た方がご理解し易いでしょう」
テーブル上に3D画像が描かれた。
「これが穴です。 周囲から地下茎が伸び、エネルギーを供給していました。 地下深くには、恐らく例の受信花の逆パターンの植物が存在するのでしょう。 電気的なエネルギーを電磁波に変える機能を持った花が」
「まあ、電波を受信して電気を発生する植物が存在したんだから、そんな植物が進化していたとしても可笑しくは無いな」
「ポイントは、エネルギーの供給パターンです。 この地下茎のエネルギー供給は一定では有りませんでした。 即ち、この変化にこそ意味が含まれていると考えられます」
「通信波の内容・・・と言う事か?」
「そうです。 ご覧下さい。 地下茎の各接点で決して大きくはない電流のやり取りが行われている。 これは・・・あたかも人の脳のシナプスでの情報の授受に似ています」
「なんだって? もし、ロームの仮説が正しいとすれば、木と木を結ぶ地下茎のネットワークが、人の頭脳のネットワークと同じ様な働きをしていると言うのか?」
「その通りです。 しかも、この大陸全域の木々がネットワークを形成しているとするならば・・・その複雑さは、正に人の脳に匹敵するでしょう」
「だとすれば・・・」
「そうです。 これまで、惑星外通信の傍受や、先程の発信が何者かの意志により実行されていると推測していましたが・・・」
「この惑星の木々全てが、意思を持っていると言うのか?」
「現時点の情報での仮説ですが・・・植物達の集合意識・・・なのかも知れません」
「それを確かめる方法は有るか?」
「正直に申し上げて、方法は思い浮かびません。 地下茎の電流の変化は読み取れますが、それが意味するところまでは・・・」
徐にディプロが口を挟んだ。
「ローム、この惑星の木々は、当然だが他の生物と共生している。 もし、木々に意識が有るとすれば、他の共生する生物達とコンタクトを取る手段を構築しているのではないか?」
「可能性は無いとは言えませんが・・・果たしてどこを探せば良いのか」
それまで目を閉じ、ロームの話に耳を傾けていたアキラが大きく目を見開いた。
「ネットワークならば、この惑星で最も密度の濃いところを当たってみよう。 確か・・・」
3D画像を惑星のスキャンデータに切り替えた。
「このネットワークケーブル網、この密度が最も濃い部分が植物意識の中心と言う事にならないか?」
「確信は有りませんが、可能性は有りそうですね」
「良し、そうと決まれば、明日、日が昇ってから調査しよう。 今日は、これで休憩にしよう」
「分かりました。 私も疲れました。 早く寝ましょう」
アキラは初めてロームの眠そうな顔を見た。
植物達が知性を持っている。 新たな可能性を見いだした、アキラとローム。 果たして、植物知性体とのコンタクトなど可能なのか? 続く